ANOTHER8
「目黒」駅西口から徒歩4分の場所にあるオープンスタイルのビアバー「ANOTHER8」。この店がオープンしたのは2017年4月のこと。それ以前は住宅地の風景に溶け込んだ、ごく普通のガレージがあった場所だという。車がなくなった無機質な空間の雰囲気を残しながら、クラフトビールと日本酒を楽しめるバーに仕立てた、という店である。
公式ホームページには竣工当時の、無機質そのものの店の姿も公開されているが、実際にいまこの店を訪れてみると、想像していたものとは違う、「ぬくもり」の存在感に驚かされることだろう。がらんどうの空間に人が集い、笑いがあふれるだけで、これほど居心地は変わるものなのだと、この「ANOTHER8」は教えてくれる。
「この店のコンセプトは、デザイン・お酒・音楽の“マリアージュ”なんですよ」と話すのは、店長を務める鈴木智彦さん。そう言われてみると、なるほど納得である。シンプルな空間に映える、シンプルなカップに注がれたビール。そこには華やかな泡も注がれない。料理も至ってオーソドックスなビジュアルだ。しかし口に含んでみると、ビールは個性豊かな香りで飲み手に強烈にアピールをする。さらにローストビーフを噛めば、芳醇な燻香が鼻腔に抜ける。そんなギャップに、思わず笑顔を浮かべてしまう。シンプルなデザインにあるからこそ、際立った商品群は鮮烈に映えるのだろう。
店に入るとけっこうな音量でBGMが流れている。しかしそれはどこか柔らかく、今時の「ハイレゾ」という言葉とは対極にある。見上げればJBLのクラシカルなスピーカーが天井近くに鎮座しており、「ああ、さすがJBLだな。デジタルの時代でも柔らかい」と思いを巡らてしまうが、そのケーブルをたどると、音源がレコードであることに気付き「やられた!」と溜め息を漏らしてしまう。客の想像をさらに先読みしたようなコダワリが、この店をより面白い場所にしている。
薀蓄はさておき、この店はそんなコダワリが詰められていながらも、非常にボーダーレスで、気軽に訪れられる仕組みになっている点も魅力だ。クラフトビールは国内外のマイクロブルワリーから仕入れている。「ほとんどがその時限りの限定品で、ひと樽が終われば二度と登場しないものもある」という希少銘柄揃いだが、Sサイズのカップであれば700円から楽しめる。つまみ系の値段も目黒としては安い。一番人気のメニューは「唐揚げ」だというカジュアルな一面もある。
オーダーごとに支払いをする、キャッシュオンデリバリー式を採っているので、1杯だけで帰っても後ろめたさが無い。友人同士で支払いの遠慮合戦になることも無い。もちろん予約は不要だし、着席後に自由に席を移動もできる。席の間隔はかなり広く取られているが、これには「コミュニケーションが生まれやすいように、敢えて席を少なくして、移動しやすいデザインにしています」という、店のポリシーが関係している。この店では着席後の移動や交流が、むしろ推奨されているのである。
こだわり抜いて仕入れた、レアな銘柄のクラフトビールや日本酒。一から手作りしている、ビールや日本酒に合わせた一品料理の数々。十数分ごとに入れ替えるという手間よりも、「温もり」を大切にしたアナログレコードの音。これほどのお膳立てをしてもらえれば、「人と交わるのは苦手なので…」とは言ってはいられない。人と人とのつながりが生まれれば、どんな街でも「都」へと変わる。その最高の舞台が、この目黒には揃っているのである。
ANOTHER8
所在地:東京都目黒区下目黒1-2-18 横河ビルヂング101
電話番号:03-6417-9158
営業時間:17:00~翌1:00
定休日:不定休
https://sakahachi.jp/another8/
詳細地図
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